前回の記事「高額だったコールセンターシステムを個人開発で作っている話」では、AWS Connectを使ったコールセンターシステムの構想と、DID番号の取得で詰まっている話を書きました。あれから数週間——ついに続報です。
📌 AI時事ネタ:コールセンターのAI化、中小企業にも波が来た
2026年に入り、大手企業だけでなく中小企業・スタートアップへのコールセンターAI導入が本格化しています。クラウド型コンタクトセンター市場は年率20%超で成長しており、「人が全部取る」時代から「AIが一次対応し、人は複雑な案件だけ対応する」ハイブリッド型への移行が加速しています。マンチーがまさに作っているものが、そのど真ん中にあります。
念願のDID番号、ついにget!
前回の記事で「個人事業主のAWSアカウントでDID番号申請が一度却下された」と書きました。開業届に屋号を追記し、納税証明書まで追加して再申請した結果——承認されました!
「納税証明書まで要るのか」と思われるかもしれませんが、AWSの電話番号申請は国内の電気通信事業法に基づく審査があるため、事業実態の確認が厳格です。個人事業主でDID番号を取得しようとする方は、開業届+納税証明書のセットで申請することをおすすめします。
電話番号がひとつ手に入っただけで、これほど嬉しいとは思いませんでした。30数年前にPBXの配線を弄りながら「いつかもっといいシステムを」と夢見ていた還暦過ぎエンジニアにとって、この1回線はただの番号ではありません。
ver1.0、完成が見えてきた
DID番号取得後、エンドツーエンドの通話テストを重ねてきました。
このシステムのテストは、業務システム開発の感覚とは全く違います。画面を見ながらクリックするだけではなく、実際に電話をかけて通話するシナリオテスト(UATレベル)が必須です。通話料は1回22円。「1回22円なら安い」と思われるかもしれませんが、数百回のテストを繰り返すと——還暦jijiには正直痛い出費でした。それでも手を抜くわけにはいきません。電話システムは動いて当たり前、止まったら即クレームの世界です。
テストを通じて気づいたことがあります。AWS Connectはドキュメントが分散していて、パラメータの正確な値や設定の組み合わせが非常に見つけにくい。公式FAQをひとつひとつ読んでも解決しないことが多く、英語コミュニティ(AWS re:Post)まで探しに行く場面が何度もありました。AWS Connect精通者でも大変だと感じる局面が多く、AIがなければ工数は数倍かかっていたと思います。日本語ドキュメントの検索、英語コミュニティの内容を要約して日本語で説明、事前の工数算定——ここでもAIは頼れる相棒でした。
細かいところに手が届く設計
マンチーが力を入れたのは「オペレーターの気持ちを分かった人間が設計した」という点です。通信キャリアや大手電化製品企業での勤務経験があるマンチーは、オペレーターが日々どんな不満を抱えているかを身をもって知っています。その経験が今回の設計に全部入っています……つもりです(汗)
オペレーター全員通話中の自動判定・留守録誘導
全オペレーターが通話中のとき、顧客を待たせるのではなく自動で留守録に誘導します。「いつまで待てばいいのか」という顧客のストレスを軽減する、地味だけど大事な機能です。
通話転送時のオペレーター・スーパーバイザー別指定
転送先を個人指定できます。「このお客様はAさんに引き継いでほしい」「SVに上げたい」という場面で、担当者を選んで転送できます。大手システムでは当たり前でも、安価なシステムでは意外と省略されがちな機能です。
感情分析・キーワード自動検知・全員通知
「バカっ!」「納得いかない」「解約する」——こうした発言をリアルタイムで自動検知し、オペレーター全員に通知します。類似語も含めて検知でき、キーワードの登録・削除も管理画面からワンクリックです。クレーム対応の初動を早めるために、スーパーバイザーが即座に把握できる仕組みです。
SVによる通話介入・傍聴機能
スーパーバイザーは進行中の通話に対して、顧客にも気づかれずに「傍聴のみ」で聴くことも、必要であれば「三者通話」として自ら会話に加わることもできます。新人オペレーターのフォローや、クレームがエスカレートした瞬間にSVが即座に割り込める仕組みです。「後で録音を聞いて指導する」時代から、「リアルタイムで介入できる」時代へ。現場の管理品質が大きく変わります。
オペレーター間チャット・タスク管理
通話しながら隣の席に声をかけられない——在宅・リモートオペレーター環境では特に困ります。ブラウザ内でオペレーター同士がチャットできる機能と、折り返し・確認タスクを個人メモとして管理できる機能を実装しています。「折り返し時間を忘れてた!」という事故を防ぎます。
完全ブラウザ運用
管理画面・オペレーター画面ともにブラウザのみで完結します。追加のIVRハードウェアは一切不要。在宅でも、外出先でも、スマホでも対応できます。
利用者の財布にやさしい設計
Amazon Connectは従量課金のため、ブラウザがオーバーロードした状態でも課金され続けるリスクがあります。そこでブラウザのアイドル時間設定(一定時間操作がなければ自動切断)など、細かいコスト管理の配慮を入れています。使った分だけ払う仕組みだからこそ、「使わない時間に課金されない」設計が重要です。
別途RDSにテーブルを持たせた構成
各種マスタテーブルをRDS(AWSのリレーショナルDBサービス)に分離しています。これにより、導入時のデータ移行や設定変更が比較的スムーズに行えます。「自社のデータをどう持ち込むか」という導入ハードルを下げる設計です。
まだまだ紹介しきれていない機能もありますが、このあたりで割愛します。
手前みそで申し訳ないが——バイブコーディングの底力
従来のスクラッチ開発でこのシステムを作るとしたら、エンジニア3〜4人×半年程度のコストがかかっていたと思います。要件定義・設計・実装・テスト・ドキュメント——それだけの規模のシステムです。
それをマンチーとClaudeの2人(1人と1AI?)で、数週間で完成に近づけました。我ながら驚いています。
AIがいなければ無理でした。ただし「AIに丸投げ」ではありません。何度も引き継ぎ書を整備し直し、ルールを破られるたびに怒鳴り、ファイルを壊されて作り直し——そのすべてを乗り越えての今があります。このシステムはマンチーとClaudeの共同作品です。
次のver2.0に向けて——でも、今は少し休みます
ver2.0では論理マルチアカウント化とアウトバウンド機能を盛り込みたいと考えています。複数の会社・チームが同じ基盤を共有できる仕組みと、営業開拓、フォローアップ、督促業務等の自動発信です。
ただ、正直なところ——今は疲れました。還暦過ぎのjijiが数週間フルスロットルで開発してきたので、少し休ませてください。やる気が出たら再開します。
イニシエの夢が、ver1.0として動き出した
30数年前、PBXの配線を弄りながら夢見ていたコールセンターシステム。高額なハードウェアと専用線と大勢のエンジニアが必要だったものが、2026年にはブラウザと月数千円のクラウド費用で動くようになりました。
「動くものができた」という達成感より、「やっとここまで来たか」という感慨の方が大きいです。
中小企業・スタートアップが、かつて大手しか持てなかったコールセンター機能を手の届くコストで持てる時代。その入口に、マンチーのver1.0が立っています。
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